核医学検査・治療
核医学検査・治療がスタートしました!!
当院では、5月よりSPECT/CT(スペクトCT)装置を用いた核医学検査・治療を開始しました。今後、幅広い活躍が期待される検査・治療法について、放射線部統括部長の平安名常一医師に詳しく話を伺いました。
核医学検査とはどのようなものでしょうか?
微量の放射性物質を含んだ薬剤(放射性医薬品)を体内に投与し、薬剤が臓器や病巣などに集まる様子を画像化することで臓器の機能評価や病巣の所在を調べることができる検査です。一般的に知られるCT検査やMRI検査は、主に臓器や病巣の〝形態〟を調べる検査であるのに対し、核医学検査は、投与された薬剤の分布量、経時的な薬剤分布の変化の情報から、臓器の〝機能〟を評価、および病巣の部位を〝探す〟検査となっています。
放射性医薬品は特定の臓器や組織に集まる性質があります。例えば、骨のがん組織に集まる性質のある薬剤を投与すると、薬剤の集まり具合の有無で骨の転移が有るか無いかを調べることができます。また、脳の場合は、薬剤が集積する分布(血流量)を画像化することで認知症や脳血管障害の評価を行うことができます。その他にも、核医学検査では心臓・肺・甲状腺・肝臓・腎臓などの様々な臓器の機能評価を行うことできます。
検査は具体的にどのように行われるのですか?
放射性医薬品を注射器で体内に投与し、薬剤が血流に乗って標的とする臓器に集まります。薬剤投与から、撮影検査をするまでに2~3時間程度かかります(検査によっては注射後に帰宅して、2日後に撮影するものもある)。薬剤が臓器に集まったら、患者様に検査装置「スペクトCT装置」の上に横になってもらい、体内に注射された薬剤から放出される放射線(ガンマ線)をカメラにて収集し、それを画像化します。 検査自体、全く痛みはなく、撮影中に息を止めることもないので、楽に検査を受けていただけます。身体から放射線が出ると聞くと驚かれる方がいるかもしれませんが、検査用の放射線は微量なため人体に害を及ぼすことはなく、患者様の副作用もほとんどないのが特徴です。
核医学治療とはどのようなものでしょうか?
核医学検査と同様に、放射性物質を体内に投与して行います。検査と異なるのは使用する放射性医薬品が診断用ではなく、治療用という事だけです。身体の外から放射線を病巣に照射することを「外照射治療」と言いますが、核医学治療は身体の内側からがん細胞を照射するので「内照射治療」と呼ばれています。当院ではこの治療法を前立腺がんの骨転移や、これまで県内では治療する事ができなかった神経内分泌腫瘍に対して行います。
核医学治療の特徴は、投与した薬剤が標的とするがん細胞に付着してその病巣のみに放射線を照射することです。そのため、病巣以外の部分が受ける放射線の影響はかなり小さいものとなります。また、前立腺がんの骨転移では、背骨や肋骨、四肢骨、骨盤の骨などに多数存在していても、注射のみでがんを同時に照射することができます。但し、1回の投与量は制限がありますので、複数回に分けて注射を行います。個数や大きさにもよりますが、複数個の前立腺がんの骨転移を外照射治療のみで行う場合は、時間がかかることや身体の負担も少なからず存在するため、核医学治療を行うことで患者様の負担軽減につなげることができます。
核医学治療を導入する事によってがん治療の幅が大きく広がります。 これまで神経内分泌腫瘍の治療法は手術か薬物療法のみでしたが、今回、新たに核医学治療が治療法の一つに加わりました。今後は核医学治療と、サイバーナイフなどの外照射治療、カテーテルにて抗がん剤をがんの栄養血管に直接投与する動注化学療法をうまく組み合わせることで更なる効果が期待できます。 我々はこれからさらに多くの患者様の治療に貢献していきたいと思っています。
がんの特定や、血流障害の確認にも活用される核医学検査。その一例としてがんの骨転移検査、脳の血流量の検査を紹介します。