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前立腺がんについて

知っておきたい病気のコト

泌尿器科主任部長 向山秀樹

「前立腺がん」は、近年罹患者数が増加している病気の一つ。当院での治療件数も年々増加しており、最新の検査・治療システムを用い日々治療にあたっています。泌尿器科について幅広い経験と知識を持つ向山医師に、前立腺がんについて伺いました。

前立腺がんとはどのような病気ですか?

前立腺は、男性のみにある臓器で、精液の一部を分泌する働きや精子の運動を活発化させる役割を持っています。前立腺がんは、前立腺の細胞がなんらかの原因で異常に増殖する悪性腫瘍のこと。多くの場合はゆっくり進行するので、早期に発見し適切に治療すれば治癒することができます。近年は医療技術も発達していますから、治せる病気とも言われています。

早期の段階ではほぼ自覚症状はありません。進行すると腰痛に似た症状が発生する場合がありますが、これは前立腺がんが骨に転移したことで起こる痛み。この時点ではかなり進行していると考えられます。まれ に、早期の段階で、尿が出にくい、排尿回数が多いなどの症状が出ることもありますが、前立腺肥大症でも発生するので、精密検査をして見極めます。

前立腺がんは表2にあるように50歳以上の中高年世代に罹患数が多く、表1のように近年日本では前立腺がんの罹患者数が急激に増えています。遺伝的要因もあることが分かっており、一親等以内の家族に前立腺がん患者がいる場合は、罹患率は4倍高まることがわかっています。当てはまる人には30代くらいの早いうちから定期的に検査を受けることを勧めています。

前立腺がんになってしまう原因は何でしょうか?

はっきりとした原因はわかっていませんが、加齢によるホルモンバランスの変化が関与しているほか、食生活や生活習慣などの環境因子も関連があると言われています。一昔前までは、前立腺がんは男性ホルモン(テストステロン)の数値が比較的高い欧米の男性に多い病気として知られていたのですが、近年は、日本でも急激に増加中。昔と比べて動物性脂質や動物性の加工食品の摂取が多い人で発症率が高い傾向にあります。日本で食の欧米化が進んでいることも前立腺がんと関連しているかもしれません。

また、喫煙習慣のある人は、前立腺がんになった際に死亡リスクが高まるという報告があります。余談ですが、喫煙者は膀胱がんになるリスクが高いことが分かっています。タバコに含まれるニコチンやタールなどの成分は尿として排泄されますが、膀胱に溜まる際に悪い影響を受けやすいようです。

前立腺がんを予防する上で、気をつけるべきことはありますか?

前立腺がんの要因は、男性ホルモンや環境因子などさまざまなことが関連しているようなので、対策法は明確には特定されていません。とはいえ、毎日の食生活や生活習慣は少なからず気をつけることは有効です。例えば、食事では動物性加工食品や揚げ物などを過剰に摂らないようにすることや適度な運動習慣を持つこと、睡眠をしっかりとること、ストレスを溜めない生活も大事だと思います。

また、病気を早期に発見することができれば治療の選択肢は広がります。近年は技術が進み、採血検査で「PSA値」という項目を調べるだけでがんの可能性を確認することができます。それから必要に応じてエコー検査やMRI、生体検査などの精密検査を行います。特に前立腺がんの罹患者数が急激に多くなる50歳以上の方は、年に1度は健康診断や人間ドックなどで検査を受けて早期発見につなげてもらいたいと思います。

前立腺がんに限らず、排尿に関連して何か違和感がある場合も、放置せずに早めに最寄りの泌尿器科を受診してみてください。

前立腺がんの検査方法